研究紹介

物理・情報科学科の研究紹介

研究紹介

物理学は文明の出現とともに始まり、化学、生物学などの自然科学の発達や科学技術の進歩を支えてきた基盤的学問です。一方情報科学は、物理学や工学 の発達にともなってほんの半世紀ほど前に生まれた新しい学問ですが、最先端の研究はもちろん,現代の情報化社会を支える重要な学問分野となっています。山 口大学理学部物理・情報科学科ではこれらの学問分野の中でも特に以下の研究を推進しています。 

研究分野

物性物理学

物質は分子・原子からできており、いろいろな物理的な性質(物性)を持っています。電気的性質、機械的(力学的)性質、熱的性質、磁気的性質、光学 的性質等です。これらの性質は、物質の微視的(ミクロ)な構造によって決まります。物性物理学は、なぜ物質が多様な性質を示すのかを、微視的な観点から探 究する物理学の研究分野です。金属、半導体、磁性体、誘電体、セラミックス、ソフトマター・高分子、生物その他さまざまな物質系を対象とします。

 ○物性実験物理学

・磁性物理学 (藤原 哲也 講師)

どんな物質も強か れ弱かれ磁気を帯びています。物質の磁気に関する性質を磁性といいます。物質の磁性は、特定の原子が持つ特殊な電子の運動によって発生することが大半で す。これらの特殊な電子の代表格として3d電子や4f電子があります。これらの電子をもつ遷移金属や希土類金属を主成分とする新規物質を開発し、3d, 4f電子に起因した新奇な磁気現象(量子現象や相転移、例えば、超伝導現象や磁気フラストレーションに由来した相転移など)の探索とその起源の解明を行っ ています。 

・誘電体物理学 (朝日 孝尚 教授)

(後日、作成) 

・構造相転移物理学 (笠野 裕修 准教授)

【固相中の構造変化の機構を解き明かす】

誘電体(絶縁体) における構造相転移(結晶内の原子や分子の相対的な配置が、温度や圧力の変化に伴い変わるような現象)について、エックス線や中性子線の回折現象を利用 し、誘電体の結晶構造を解析することによって、相転移機構の解明を目指しています。また、新規有機物系強誘電体(強誘電体とは、外部電場がない状況下でも 物質内に電気分極が発生していて、この分極(自発分極)が外部電場の反転に伴い反転できる物質のこと)の結晶育成並びにこれらの物質で起こる構造相転移と 水素結合の関係に着目した研究も行っています。

・高分子物理学 (野崎 浩二 教授)

【鎖状分子の構造形成の謎を解く】

ポリエチレン (PE)、ポリプロピレン(PP)、ペット(PET)等、私たちの身の回りで使われているプラスチック材料は、高分子と呼ばれる鎖状の長い巨大な分子に よって構成されています。物質の物理的な性質(物性)はその構造によって決定されます。高分子は金属などの低分子物質とは異なり、長いという特性に由来す る特徴的な階層構造や物性を示します。長い分子の構造形成や物性の起源を探ることは物理学の重要な研究テーマの一つです。私たちは結晶性高分子や長鎖有機 分子の構造形成に関する研究(結晶化、結晶構造、固相転移現象、薄膜構造形成)をX線回折法、小角X線散乱法、熱分析法、光学顕微鏡法、原子間力顕微鏡法 などの実験的手法を用いて行っています。

 

・コロイド物理学・化学物理学 (堀川 裕加 講師)

【液体中の分子の振る舞いを探る

分子が水や液体に 溶けた状態とは分子スケールで見るとどういう状態なのかを軟X線分光を用いて調べています。周りの分子との相互作用がなく自由に飛び回る気体分子とも、規 則正しく長距離秩序を持って分子が並んでいる固体とも異なり、短距離秩序は持つが流動性があるのが液体ですが、液体中の分子の電子状態はどうなっているの か、どこまで周りの分子に乱されているのかの情報を実験的に抽出し、得られたスペクトルを正しく解釈していく研究を行っています。そのための手法開発も 行っています。

素粒子・宇宙論

素粒子の世界と宇宙の巨視的現象は1つに繋がっています。例えば、ニュートリノ振動の発見は素粒子論的な大発見であると共に、恒星の核反応や宇宙の 構造形成の解明に進展をもたらしました。素粒子・宇宙理論グループでは、微視的スケールと巨視的スケールの両面の理論的研究から、宇宙の神秘を解明するこ とを目指しています。 

・理論宇宙物理学坂井 伸之 教授齋藤 遼 助教

【計算で宇宙を解明する】

一般相対論を初めとする物理の基本法則、及び観測に基づいて、宇宙の創成・進化やブラックホール等の強重力天体について理論的に研究しています。

最近は特に、「強い重力現象がどのように見えるか」について、コンピューターによる計算で調べています。

 理論宇宙物理学研究室

・素粒子物理学 (白石 清 教授)

【素粒子理論から探る重力の謎】

素粒子統一理論から導かれるブラックホールの性質、修正された重力理論における高次元初期宇宙シナリオ等を理論的に研究しています。

https://gate.sings.jp/member/Welcome.do

電波天文学

宇宙がどのようにできており、どのような法則に支配されているのかを理解するの が、宇宙物理学の目的です。そのためには、宇宙や天体が出す電磁波をとらえて解析 を行うこと、つまり観測が必要です。良く知られている観測方法は、天体が出す光を 観測するものですが、天体が出す電波を観測する方法もあります。これが電波天文学です。

・電磁宇宙物理学研究室 藤澤 健太 教授新沼 浩太郎 准教授元木業人 講師

山口32m電波望 遠鏡を使って、宇宙ジェットと呼ばれる超高速なジェットや、星が 誕生するときに熱されたガスが出す電波を観測しています。このような電波の性質を 調べることで、ブラックホール周囲のジェット現象や星の誕生を研究します。また、 観測を行う装置を開発することも重要な研究課題です。

シミュレーション科学

・分子シミュレーションによる生体現象の物理的解明 (浦上 直人 准教授)

pi_02.jpg単細胞生物を観察すると移動するために形を変えたり、自分自身を複製するために分裂したりいています。このような生体において観察される現象は、ど のようにして生ずるのでしょうか? この答えを示す手段の一つが、コンピュータシミュレーションです。近年、コンピュータの発達により、生体内で観察され る現象も、単純な分子モデルを利用することでコンピュータでシミュレーションすることが可能になってきています。我々は、生体現象をコンピュータで再現す ることで、これまで生命の神秘として考えられてきた現象を、物理的にシンプルに理解することを目標に研究しています。

理論脳科学

・脳を情報科学的視点で探る (西井 淳 教授)

【脳の計算論的モデル】

私達の脳は無意識のうちに様々なことを記憶・学習することができます。このような脳の仕組みを情報科学的視点で探り,ニューラルネットワークモデルなどの計算論的モデルとして提案しています。


【スキル発見】
ス ポーツや楽器演奏のコツは脳が無意識下で獲得していることが多いため、言葉に表すことが困難なことも少なくありません。そこで、熟練者の運動をモーション キャプチャーシステムで計測し、データサイエンスの手法で解析することにより、これまで言語化されていなかったスキルを発掘する研究をしています。

 

・ブレインコンピューティングシステム (内野 英治 教授)

ヒトの脳の持つ優れた情報処理メカニズムを構成的、数理的に解明し、それを基に、最終的には次世代の脳型情報処理システム(ブレインコピューティン グシステム、自然知能システム)の構築を目指しています。具体的には、神経ネットワークモデルによる聴覚、嗅覚、視覚系の解析、ヒトの学習モデルの構築、 カオスネットワークを用いたヒトの記憶モデルの構築、推論メカニズムの解析、および、それらの応用などを神経生理学や心理学より得られた知見をもとに、主 に情報科学的観点から進めています。応用として、脳型情報処理システム、人工聴覚システム、音声認識システム、最近では特に医療診断支援システムへの応用 を目指して研究を進めています。 

情報・通信理論

色覚バリアフリーを実現する画像処理アルゴリズムの開発 (末竹 規哲 教授)

パソコンやHDテ レビ、スマートフォンなどの急速な普及により、多くの分野で画像や映像をフルカラーのデータとして取り扱うことが一般化されています。しかし、画像や映像 をフルカラー表示すればするほど、全ての人にとって情報が正確に伝わるというわけではありません。日本人を含む多くの黄色人種では男性の約5%の人が1又 は2色型色覚という視覚特性を有していて、特定の範囲(例えば,多くの2色型色覚者では,赤と緑、青と紫など)の色弁別に困難を感じています。そこで、全 ての人にとって見やすく分かりやすい画像を生成するために「色覚バリアフリー色変換技術」の開発に関する研究を行っています。その他にも、人の視覚特性を 考慮した各種画像処理アルゴリズムの開発を行っています。 

・通信・記録システムを支える誤り訂正符号 (野﨑 隆之 准教授)

インターネットで 動画を見るときに動きがカクカクすることがありませんか? この現象は通信の途中でデータの一部が消えたり誤ったりすることが原因です。消えたデータや 誤ったデータを元に戻す方法のひとつが「誤り訂正符号」です。誤り訂正符号はデータを送ったり保存する際に広く利用されています。例えば、右のQRコード の一部を指で覆ってもデータの読み込みができるのは誤り訂正符号のおかげです。この研究室では高性能な誤り訂正符号の開発やその性能の理論的解析をしてい ます。さらには誤り訂正符号の技術を応用したネットワークシステムの構築や暗号システムの考案をしています。また通信システムに関する理論的な研究もして います。 

・数理モデルの電子透かしモデルへの応用 (川村 正樹 准教授)

【電子透かし技術】

電子透かし技術とは、画像や映像などのデジタルコンテンツに、知覚できないわずかな変更を加えて、秘密のメッセージ(電子透かし)を埋め込む技術のことです。コンテンツが加工されたとしても、電子透かしを読み出せる頑丈な電子透かし技術を開発しています。

【連想記憶モデル】

情報処理するため には記憶が重要ですが、人間とコンピュータでは記憶の仕組みが全く違います。人間のような柔軟な記憶方法を計算機で実現するための基礎研究をニューラル ネットワークを用いて研究しています。また、学習理論やベイズ推定を用いた最適解の解法にも取り組んでいます。一見無関係に見えるテーマですが、モデルを 作ってみると共通点があります。このような共通モデルに基づく理論的な研究もしています。 

・人間の視覚や脳の情報処理を模倣できる人工知能システムの創出 (韓 先花 准教授) 

pi_11.jpg近年、デジタルカメラ等の情報端末やWWW 上等のネットワークの普及に伴い、従来とは比較にならないほど膨大な画像、マルチメディア情報が流通している。この膨大な数のデータの中から、利用者にとって最も適した情報のみを的確に提供し、活用できるような技術が求められている。本研究室ではこのような実世界に溢れている膨大なデータを対象に人間の視覚や脳の情報処理プロセスを工学的に模倣できる数理モデルや機械学習基礎技術を開発し、観測データから本質的な構造や新しい知見を発見できる高い人工知能システムの創出を目指す。その具体的な研究例として、1)先端的機械学習法により計算機に人間のような極めて柔軟かつ信頼性の高い画像認識・理解システムの開発;2)センサーで得られた低解像度の画像から機械学習技術を用いた高解像度(高精細)画像を生成し、ユーザにより有用な情報の提供;3)人工知能技術を医療分野に応用し、知能化医療診断・治療支援システムの開発。このような人工知能分野における基礎・応用研究を通して機械の知能化・人間生活の利便性に貢献できると考えられる。 

・最適な状態に至ることができなくなっているシステムの振る舞い (上田 仁彦 講師)

pi_12.jpg私たちは人生において何かの量(例えば富であったり幸福であったり)を最大化 したいと思っても、どのような行動をとるのが良いかは簡単にはわからないこと が多いと思います。特に、他人の行動によって自分の取るべき行動が変わってく るような状況では尚更行動選択は難しくなります。結果として多くの場合不十分 な認識能力に基づく状況が実現されます。我々の研究室では、「このような最適 な状態に至ることができなくなってしまっているシステムの全体としての振る舞 いに何らかの規則性はあるのか」という問いに答えることを目指して、現実の現 象の適当な側面を切り取ってきた数理モデルに対する理論研究を進めています。

・ネットワーク技術で科学と社会の問題を解決松野 浩嗣 教授 Adrien Fauré 助教

【無線ネットワーク構築技術】

災害が起きると電話や電気などが使えなくなり、通信手段が絶たれることがあります。そこで、無線LANを使った被災時通信システムの開発に取り組んでいます。実用化を目指して、山口市の地域の方々と協力して実験を行っています。

 

【生命のシステム的理解のための計算機応用】

pi_09.jpg遺 伝子には細胞の基本的部品であるタンパク質をつくる情報が書かれていて、これらが相互作用することで生命活動が行われます。コンピュータにこれらの要素や 相互作用を入れて、シミュレーションすることで、新しい遺伝子機能を発見したり、病気の治療法を探す研究を行っています。