2021年度

2021年9月2日

「萩ジオパークシリーズ」第4弾最終回

 まずは、「畳ヶ淵(たたみがふち)」に行ってみました。前から行きたかったのですが、機会を逃し、なかなか行くことができなかった場所です。山口県の北東部、島根県との県境近く、それも、山口市から島根県の津和野を経由して益田市に抜ける主要国道である国道9号線からもかなり離れており、ちょっと寄ってみようという場所でもありません。
 畳ヶ淵を始め、この付近には約40万年前に「伊良尾山」(前回ご紹介した火山)から流れ出た溶岩が14kmほど「田万川」に沿って流れ固まって、奇妙な地形を形成しています。この溶岩流は「龍が通った道」と呼ばれています。
 畳ヶ淵は駐車場も整備されており、途中の道も広く行きやすい場所です。駐車場から林に囲まれた階段を谷に向かって下りていくと渓谷に感動的な風景が広がります。多角径の柱状の石を敷き詰めたような場所が広がっており、川の両端の崖も多角形の石柱が見られます。もちろん水は透明でとてもきれい。駐車場からわずか5分で別世界です。

 20210902-01.JPG 畳ヶ淵」の駐車場の案内板

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  畳ヶ淵」の風景

  この多角形(主に六角形)の柱状の石は溶岩が冷えて固まる際にできたものだそうです。詳しくはパネルの画像を拡大してご覧ください。高分子の結晶化の研究をしている私、この奇妙な形状のパターン形成についてはいろいろと想像が膨らみました。岩の上の水たまりを見てみると生き物があちらこちらに。

 次は自動車で再び移動し、「猿屋の瀧(さるやのたき)」へ。何も知らない私、「瀧(滝)」だから谷に向かって降りていくのだと思い、駐車場に車をとめて、歩き出したとたんに目の前のパネルと風景に気づきました。なるほど。先ほど谷底から見た多角形の柱と同じような崖がありました。

 20210902-08.JPG「猿屋の瀧」の駐車場の案内板。水田の前にあります。

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「猿屋の瀧」の絶景

  最後は「龍鱗郷(りゅうりんきょう)」です。「猿屋の瀧」から「龍鱗郷」までの道は車同士も離合する(「すれ違う」の方言?)ことが困難な山の中の道路です。久々に緊張のドライブでした。現地に到着すると、目の前に絶景が。農道の切通の断崖がすべて石柱です。伊良尾山から流れ出た溶岩の終着地点だそうです。切通の道路を挟んだ反対側の崖の上に展望台が整備されています。展望台の上にも石柱を使ったモニュメント?がありました。最後に石柱の断崖をバックに記念写真を。「龍の鱗」なるほどですね。

 20210902-11.JPG「猿屋の瀧」の駐車場の案内板。水田の前にあります。

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展望台の上にはこんなものが

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石柱の断崖
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  「龍の通った道」をはじめ、「畳が淵」、「猿屋の瀧」、「龍鱗郷」とてもよいネーミングですね。以前、記事に書きましたが、まさしくSTEAMです。龍の通った道は私にとっては感動の道でした。
 その道を抜けると最後は萩市の小川地区というところに到着します。私が最も好きな山口の地酒「東洋美人」の澄川酒造があります。私にとってはいわば「聖地」です。きれいな水、日本酒造りには必須ですね。以前、本学部の地球科学の教員から教わったことがあります。山口の有名な酒造のほとんどは断層の近くにあるとか。

2021年9月1日

「萩ジオパーク」シリーズ第3弾

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林道を車で走っているとこのような看板が。駐車場も整備されています。この先行き止まり。片側一車線ずつの立派な林道ですが、対向車とは1台も出会わず。

 山口県の北部の阿武町に伊良尾山は阿武火山群に属する火山です。この麓を通っている林道沿いに、火山から噴出した火山灰などが堆積してできた地層があります。林道ののり面の工事中に発見されたもので、学術的貴重な資料であることから山口県が一部を保存し、観察施設をとして整備したものです。地質の学術調査中、この地層に気づいた永尾先生(元山口大学理学部教授)が、県に事情を説明した結果、保存されることになったと聞いております。説明看板の下部には先生のお名前もあります。この地層の一部をはがして標本にしたもの(幅3m高さ2m程度)が山口大学理学部1号館の2階に展示されています(末尾の画像)。

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 現地の案内看板(永尾先生(元山口大学理学部教授)らの名前も記されています)

 いつも標本を目にしていたので、一度実物を見てみたかったのですが、やっと実現しました。現地には永尾先生らが監修されたとてもわかりやすい解説があります。解説の説明を読みながら興味深く地層を拝見させていただきました。
 解説パネルが5つほど設置されています。林道ののり面で地層が観察できます。通常、工事の後、のり面は崩落防止のためコンクリートや植物で覆われますが、ここでは一部がそのままにして残され、その部分は屋根で覆われています。観察ルートも整備されています。(整備にはかなりお金がかかっていると思います。感謝です。)

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解説パネルと地層の観察施設

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溶岩流の先端部

 解説を読みながら地層を目の前にするといろいろなイメージが頭の中に浮かびます。溶岩流の先端にはたくさんの穴が見られますが、ガスが抜けた跡(気孔)です。
 当日は地元の方思われるお二人が施設周りの草刈りをしておられました。身近に貴重な学術資料があることを誇りに思っておられるここと思います。

 先ほどもご紹介しましたが、この地層の標本は、現在、山口大学理学部1号館の2階で展示しております。地層の標本は、通常は剝ぎ取ったものをそのまま展示するそうです。したがって裏側から見たようになります。しかし、この標本は、現地の地層から一旦剥ぎ取ったものからさらに剥ぎ取っているので、現地と同じ向きに見ることができます。貴重な標本です。

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山口大学理学部1号館2階で展示中の地層(イラオ火山灰層)の標本

2021年8月11日

 87, 8, 9日の3連休の後の810日(火)は理学部学生と教員との懇談会。この懇談会は毎年2回あり、学生の皆さんからカリキュラムのこと、理学部の施設等々の意見・要望を聴き、それをもとに理学部の教育に活用したり、施設等の改善をしたりします。今年からは各コースの学生(3年,4年,大学院生)があらかじめ打ち合わせをし,そのコースの学生の意見を集約してくれたおかげで、建設的でかなり密度の高い懇談会となりました。学生さんからは「学科を超えた学生同士の交流ができるような企画をしてほしい。」との要望が出ましたが、「協力はするので、コロナが落ち着いたら学生自らが企画することをお勧めします。」と回答しました。(時代の流れですね。)

 11日(水)からは1週間ほどお休みをいただきました。新型コロナウイルスのデルタ株が山口県内にも広がりつつあり、本学の学生も新たに陽性者が出ている状況でしたので、人込みは避け、山の中へ出かけました。萩ジオパーク巡り第2弾です。

 今回はまず画像の場所へ。山口市の北部に「長門峡」という風光明媚な渓谷があります。その近くに断層が走っており、道路ののり面に活断層の露頭が見られるところがあります。県が常時観察できるように保存しています。案内板には道路工事の際に現れた露頭の写真がありました。(詳しい説明は画像をご覧ください。)

 案内にもありますが、学問的にも防災上も貴重なもののようです。このあたりの活断層の調査は、元山口大学理学部教授の金折裕司先生が精力的に調査され、論文等いろいろなところで報告・紹介されています。

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木戸山西方断層の活断層露頭(山口市)

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2021年8月10日

 88日(日)はオープンキャンパスでした。今年は本部のある吉田キャンパスは新型コロナウイルス感染防止対策のため2日間に分散開催しました。さらに参加はすべて予約制であり、それに加え緊急事態宣言の対象区域やまん延防止等重点措置の対象区域からの来場をご遠慮いただきました。例年のオープンキャンパス当日は人であふれるような状況ですが、今年は画像の通り人が少なく少し寂しい状況でした。まあそれでも昨年度はオンライン方式のみだったのに比べ、今年は対面方式の企画も実施できたので進歩です。

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今年のオープンキャンパスは参加者制限もあり、キャンパス内は少し寂しかったようです

  私が教育を担当する物理学コースではスポーツ物理学の研究室の学生とコロイド物理研究室の学生が模擬講義や模擬実験をしてくれていました。参加してくれた高校生の大学・学部選びの参考になればと思います。

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 お隣の農学部のオープンキャンパスも同日開催でした。古くからある学部名は漢字1文字が多いですね。「理」、「農」、「工」、「医」、「文」、「法」。最近になって先進的な学部が次々に誕生していますが、それらは漢字1文字とはいかないようです。どこも工夫を凝らし魅力ある学部名をつけていますね。

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2021年7月26日

 前回の記事でも紹介しましたが、本学でも新型コロナウイルスのワクチンの職域接種が開始されました。7月24日(土)からはいよいよ本部のある吉田キャンパスで第1回目接種が始まりました。私も1回目の接種を無事に終えました。お休みにもかかわらず学生や教職員のために献身的に動いていただいている保健管理センターのスタッフの方々、附属病院のスタッフの方々、会場整理をしていただいている職員の方々にはたいへん感謝しております。

 さて、先日は、家族で気分転換。人込みを離れ、自然探索をしにドライブに出掛けました。このようなときに山口県のような地方では近所への出かけるような感覚で自然の中に飛び込むことができます。
 私は地理や地学が子どもの頃から好きで、特に「火山」は、短時間に動的に変化する地形が感じられるところに興味を感じます。少し怖いイメージもありましたが。長崎県の雲仙や熊本県の阿蘇山などはいつ行っても魅力的な場所です。
 日本には日本ジオパークが43地域(内9地域がユネスコ世界ジオパーク)あります。山口県には「Mine秋吉台ジオパーク」と「萩ジオパーク」があります。その萩ジオパークは山口県の北東部に広がる地域で、多様な火山活動によって形成された地域です。先日も萩市にある小さな火山である「笠山」に家族で出かけました。この度は家族のリクエストもあり、萩ジオパークの中の須佐という地域の海岸にあるホルンフェルスを見に行きました。ホルンフェルスは堆積層をマグマが貫入したときに堆積層が熱変成してできるそうです。私の専門分野に結び付けると「熱処理によって材料の再組織化が起きた結果」です。(理学部には地球科学分野の専門家がおりますので、詳細な解説は別の機会に譲ります。)
 画像のきれいな縞々の崖がホルンフェルスです。もともとは粘土と砂が交互に堆積した地層のようです。海岸の岩が平坦なので近くに接近して観ることも可能です。層理面(地層の単層と単層の境界)をよく見てみるとはっきりとした面となっており、隙間があるようにも見えます。なんとなく自分の専門分野である「物質の構造形成」に結び付け、できたときの様子を想像します。ぶつぶつと独り言を連発するので家族からは気味が悪いと笑われます。

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萩市須佐の海岸で見られるホルンフェルス

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層の境界付近

 海岸の岩もいろいろと浸食を受け、奇妙な形になっています。平坦な岩にはこのような穴もたくさん。そして、カッターナイフで切り込みを入れた跡のような形状も。なんだかある方向に切り込みが走っているような。なぜそんな形状ができあがるのか、自分の持っているほんの少ない知識を可能な限り活用するといろいろと想像が膨らみます。

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浸食の跡?

 この地域は阿武火山群と呼ばれ、いろいろな火山地形が見られます。時間をみつけて大自然の造形物を楽しみに行きたいと思います。

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大きさはこんな感じです

2021年7月19日

 新型コロナウィルス感染症がなかなか収まらない状況です。ワクチン接種が進められている中、本学でも職域接種が始まりました。工学部がある常盤キャンパスと医学部がある小串キャンパスでの1回目の接種が終わり、いよいよ本部のある吉田キャンパスでの接種が24日(土)から開始されます。私も予約を完了しました。休日にも関わらず職域接種にご協力いただいている附属病院をはじめとした他の部署のスタッフの皆さんにはたいへん感謝いたします。

 山口県内での感染者が比較的少ない状況の今、かねてより計画しておりました県内の企業訪問を実施中です。日ごろから本学部で行う地域貢献事業や学生のキャリア教育やインターンシップにご支援やご協力いただいている企業さんがあります。その企業さんからのご支援ご協力のお礼と今後の継続のお願い、そして、情報収集のために訪問し、懇談をさせていただいております。今までに研究等で個人的なお付き合いのあった企業さん、そして初めて訪問させていただく企業さんいろいろです。本学部の卒業生が活躍している企業さんも多くあります。
 実際に訪問し、その企業さんの事業内容や最近のトピックスを聞かせていただくと、いろいろと興味深いたくさんの情報を入手できます。どの企業さんも地球環境、人類、日本、地域、そして社員さんのためにいろいろな先進的な取り組みをされており、大学も見習わなければならないところが多くあり、勉強になっています。学生の就職のことも考え、社員の採用情報も収集します。
 本学部の学生は就職活動の際にいろいろなチャンネルで自分に必要な情報を入手しようとしておりますが、今の時代その主要な方法はいわゆるインターネットを通じて公開されているWEBサイトの情報が中心です。インターネット上の情報はたくさんの人に向けて発信された情報であり、膨大な情報の中から自分が必要な情報を入手するためには苦労をします。一方で、直接のやり取りから情報を収集するときには、発信者も受信者も情報の範囲を予め絞り込めるので効率的です。両者をバランスよく組み合わせるのが今の時代のやり方ですね。
 この度、企業訪問をしながら、企業訪問で得た情報を学生や教員につなぐことも、この企業訪問というミッションで求められる成果の一つと感じています。巷にあふれている膨大な情報を人と人の間でつなぐことこそ、今現代の情報化社会で求められていることです。AIを使ったやり方はすでに主流になりつつありますね。「人と人の間で情報をつなぐ」技術、今後もいろいろなアイデアが出てきそうです。

20210719.jpg 今回のご挨拶廻りは事務長や総務企画係長に公用車を運転していただいております。公用車にはドライブレコーダーを取り付けているので寄り道もできませんし、おかしな会話もできません。疲れます。。。。

2021年6月30日

 612日(土)は「やまぐち・サイエンスキャンプ」が開催されました。この行事は山口県が主催し、理学部は各講座の講師を担当することで共催をしています。例年であれば、土日で一泊二日の合宿形式で開催され、参加者は、日中は山口大学理学部、夜は山口県セミナーパークでのキャンプに参加します。
 昨年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で中止でした。今年度は、当初は一昨年までと同様の合宿形式で開催し、日中参加者には理学部に来ていただいて講座に参加していただくことを計画しておりましたが、急な感染拡大があったため、急きょ、理学部での講座をオンライン方式で開催しました。そのためか、例年は約100名の参加者があるのですが、今年は50名弱にとどまりました。
 今年は私も物理学の講座を担当しました。参加者には大学でしかできないX線を使った実験をしていただく準備を整えていましたが、急きょオンラインとなりましたので、午前中のみ、プラスチックの構造形成の話の講義をし、バーチャル実験体験を体験していただきました。参加した高校生には少し難しい話だったとは思いますが、かなり深いところまで理解した高校生もおり、少し驚きました。
 午後からは「サイエンスカフェ」も開催され、私も一つのグループに参加させていただきました。私からはほとんど発言はしませんでしたが、高校生があれやこれやと考えているのを目の当りにし、ほのぼのした気持ちになりました。

 来年は、是非、理学部に来ていただいてサイエンスキャンプを体験していただきたいと思います。

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2021年6月26日

 梅雨入りして1か月、山口はまだこれといった大雨は降っておりませんが、7月上旬は大雨が降りやすい時期、これからが注意が必要です。未だにコロナ禍、例年の行事などもなく、出張もほとんどなく、学部長のつぶやきの更新頻度が少々低下気味です。
 私は自宅の庭の木々の剪定を適当にやります。植物学や造園学の知識はまったくといってよいほどありません。まったくの素人です。重点目標は「木が高くならないようにする、木の枝が空間を占領しないようにする、庭からはみ出さないようにする」の3点です。おそらく、それなりに経験のある方からすると笑われたり顔をしかめたりされそうな時期に、適当なやり方で選定作業をします。まあ、今まで枯れていないからよしとしましょう。
 前回剪定した木々も再び茂ってきました。思い立って無茶苦茶な剪定の検証をしてみようと思い、木々を観察してみました。剪定で枝を切った後、木が新しくどのように成長いるかを見てみると、(当然なのでしょうが)木の種類によって違います。そこで画像として記録し、そのデータから学習して次にいかそうと思い、データ収集をしました。プチ・データサイエンスです。データサイエンスなど大げさなものではなく、経験的なやり方の範囲と言ってしまえばその通りですが。本やネット上でもいろいろな情報があり、そこから知識を得れば、適切な剪定のやり方がわかるのでしょう。しかし、私には幸い庭の植物に強いこだわりがないので、ここはプチ・データサイエンス!画像情報だけにこだわり、そこから何らかのものを見つけてみようと思います。きわめて非効率的なやり方ですが。

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2021年5月31日

20210531-01.JPG 私は土日、GW、夏休み、年末年始のお休みの日は軽いジョギング(5-10km)をします。15年間くらい継続しています。(我ながらよく続いているものだと思います。)ジョギング中は視野に入ってきたものを題材にいろいろなことを考えます。先日は画像のようなボルト(ネジ)が目に入ってきました。このボルトは用水路の水門を開閉するためのものです。

 ネジはとても便利なものです。いったい誰が発明したのでしょうか。紀元前、古代ギリシアではすでに使われていたようです。結局、誰が発明したのかは不明のようですが、諸説では巻貝をヒントにしたとか、植物のつるを真似たとか。ネジはいわゆる螺旋(helix)の構造をしています。
 螺旋構造はいろいろなところにあります。例えば分子は螺旋構造となるものがたくさんあります。私の専門分野である高分子は結晶中では螺旋構造になります。(私自身今現在は、螺旋分子の配列の秩序性が変化する相転移現象の研究をしています。)DNAの二重螺旋構造も今ではよく知られています。巻貝や植物のつるなど実際に目に見える螺旋も多くあります。

 螺旋を方程式で表現すると

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のようになります。(詳しい説明は省略。)がネジの半径を、 がネジピッチを決めるパラメータです。数学を道具として使えば螺旋もすっきり(?)表現できます。

 物理学、化学、生物学、地球科学、天文学等々の自然科学では道具として数学を使います。特に、物理学では基本法則を数学の方程式で表します。ニュートンの運動の法則もアインシュタインの相対性理論もとてもすっきり表現できます。さらにその基本法則からいろいろな法則を導くことが可能となりますし、いろいろな物理現象を説明することもできます。数学はなくてはならないものです。他の自然科学の分野でも少なからず数学を使います。
 自然科学のみならず工学、医学、農学等の自然科学の応用分野でも使いますし、経済学でも数学は必須です。今後、いろいろな分野にデータサイエンスが導入されると思いますが、そこでは数学や情報科学を道具として使います。以上のように数学はいろいろなところで使われています。

 数学といえば計算で苦しんだ方も多いかもしれませんが、今や具体的な計算はコンピュータがする時代、せめて数学を道具として使うやり方を知っておきませんか。もちろん数学という学問そのものを勉強するのも面白いと思います。

2021年5月24日

 西日本は早くも梅雨入りしました。山口も先週は雨がよく降りました。
 休日、私は市内を自転車でぶらり一回りすることがあります。皆さんは今、自分が住んでいる地域が、どのような経緯で今のような街並みになったかを想像されたことはありますか。自転車で巡りながらそのようなことを考えます。
 今住んでいる地域の街並みは、過去のその時々でさまざまな事情が複雑に相互作用した結果による「準安定的な状態である」と言えると思います。その時々で「最安定な状態」(それが必ずしも最適解とは限らないのかもしれません)があったのでしょうけど、その状態にするには膨大なエネルギーが必要であり膨大な時間がかかります。そこで、とりあえずはその時々で「準安定な状態」を選んできた結果が今の姿なのでしょう。政治、外交、ビジネス、業務、日常生活、いろいろなところでも似たようなことはありますね。「そうなればよい(そうできればよい)のだけど、なかなかね。」というわけです。
 私の専門は高分子物理学という分野です。今現在行っている研究テーマの一つに、高分子の結晶の中で起きる準安定最安定相転移(相転移:大雑把に言えば状態の変化)の進行メカニズムというのがあります。物質が準安定状態から最安定状態に変化する現象はよくあります。その変化は、金属のような単原子から構成される物質や低分子物質では比較的容易に進行する場合が多いです。しかし、高分子の場合は、たくさんの原子が共有結合してできている巨大な分子ですので、相転移がすんなりとは進行しない場合が多々あります。「本当は変化したいのだけど、なかなかね。」というわけです。まあ、研究としてはそこが面白いのですが。
 私はこのような物事の見方や思考を他のところにもついつい適用してしまいます。最初の「街の今の姿」の話もその例です。職業病かもしれません。他の方々から見たら「へんな奴」かもしれませんが、その一方で「独創的」な感性を持っているなあとも思われるかもしれません。何か新しい仕事を遂行するときに、いろいろな「職業病」を持った多様な人が集まった方が多様なアイデアが出てきてよさそうですね。ただし、船頭役は必要です。これがダイバーシティーの考え方。
 国や自治体、その他さまざまなところでいろいろな方々が頑張って取り組んでおられる新型コロナウイルス感染症対策、「本当はこうしたいのだけど、なかなかね。」ばかりなのでしょうね。

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市街地中心にある亀山公園から望む山口市内

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太鼓谷稲荷神社から望む津和野の街並み(島根県です)

2021年4月30日

 水平線に近い位置の月がとても大きく見えるという経験をした人は多いと思います。「山などの比較対象物があるため錯覚で大きく見える」というのが理由だそうです。しかし、あきらめの悪い私は、「測ってみればいい」と意地になって家にあるものだけを使って測ろうとしたことがあります。
 人類は紀元前からいろいろな工夫をして量を測定する方法を確立してきました。その成果については教科書などにも書かれていますので、ここで説明するまでもありません。とにかく先人たちの頭脳と工夫には驚かされますね。現在、量を測定することは、日常、いろいろなところで行われます。さまざまな機器やセンサーが開発され、たくさんの測定データが簡単に得られるようになってきました。
 自然科学の研究の多くの場面で実質的な研究が量を測定することからスタートします。今現在は、先進機器を導入して“適切に測定しさえすれば”質のよい測定データがたくさん得られます。先進機器にも安価なものもあり、とにかく多種の膨大な測定データが得られる時代になりました。
 ただし、測定データが得られればそれで終わりではありません。そのような多種多様な膨大な数のデータから得たい情報を取り出すことが必要です。その作業には今までの伝統的なやり方は通用しません。新しい手法を導入しなければデータを有効活用できない時代になっています。当然、コンピュータがよい道具になります。いわゆる(広い意味での)「データサイエンス」と総称されるものです。私たち研究者も新しい手法を導入しないと先進的な研究に取り残される時代になりました。研究以外でもデータサイエンスの手法はどんどん導入されています。コロナ禍の今、威力を発揮しているようですね。このような時代に乗り遅れないように、理学部も今年入学した1年生からデータサイエンス系の授業科目をカリキュラムに導入しています。数量を適切に取り扱って情報を取り出す能力、「数量的スキル」は重要です。

20210430-01.jpg 話は変わりますが、私は簡単な実験機器を自作することがたまにあります。自分のやりたい測定がそのままできるからです。昔の研究者はみんなそうだったと思います。完成させて試験的に使うまでがとても楽しく、今の私には、工作がストレス解消にとてもよい作業です。学生は私の作品を使って実験をします。今の時代の学生は自分で器具を製作するという発想があまりないようです。というわけで学生にも工作を楽しむ経験をしてもらうこともあります。それがきかっけとなって実験装置の製作に夢中になる学生もいます。それでよしです。データサイエンスの手法を使うにも信頼できるデータがとれなければ話になりませんので。

2021年4月7日

 令和3年度が始まりました。理学部長4年目です。よろしく願いします。46日に無事入学式を挙行しました。2回に分け、時短で開催でしたが、挙行できたことが何よりです。フレッシュな1年生と対面でき、うれしく思いました。

 「神サイ」流行っているようですね。FMラジオでもよく「神サイ」の曲が流れます。「神はサイコロを振らない」というバンドです。私が初めて名前を知ったのはFMラジオで曲聴いたときでした。なかなかよい曲だなあと思いましたが、やはりバンド名が気になりました。なぜ彼らはこの「物理学」に関連する名称を使ったのだろうと。
 一応、物理学をかじっているものとしては「神サイ」は聞き逃せない名前です。ご存知の方も多いと思いますが、この言葉はアインシュタインが「量子力学」の考え方に納得せず、量子力学を批判した言葉と言われています。私もニュートンの確立した古典力学を学んだ後、初めて量子力学の話を聞いた時には、その概念がなかなかイメージできませんでした。おそらく、物理学を学んだ方のうち、一定の割合で同感という方がおられると思います。
 アインシュタインは納得できない内容を「神はサイコロを振らない」という非常にわかりやすい一言で表現しています。(この言葉で表現していることの凄さは量子力学というものをある程度説明しなければならないので、ここではやめておきます。)これぞArtsと思います。先日の記事でSTEAMについてお話ししましたが、そのAArtsです。わかりやすく印象に残る短い言葉で言い切っています。昔の学者や偉人は多くの名言を残しています。Artsの素養をもっていた方が多いですね。
 日本で二人目のノーベル賞受賞者で朝永振一郎先生(ノーベル物理学賞)の著作で、量子力学の概念を扱った一般書に「光子の裁判」とう本があります。物語の主人公は波乃光子といいます。量子力学を学んだ者にはとてもよいネーミングであり、とてもわかりやすいたとえ話であることがわかります。このようなネーミングができるのもArtsの素養があるからですね。「光子の裁判」は私の学生時代に量子力学の講義をしてくださった教授が2,3回の講義時間を使って朗読してくださいました。とても印象深い思い出です。
 Artsの素養、もっておくと人間の幅が広がります。

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