[2014/8/5] 第5回理学部講演会

日本海溝軸巨大地震性すべりの時空間分布解明に向けて (小平秀一センター長:海洋研究開発機構)
  • 何が 2014年度理学部講演会
  • いつ 2014年08月05日07時30分から08時40分までのイベント (UTC / UTC0)
  • どこで 理学部13番教室
  • 連絡先名称
  • イベントをカレンダーに追加 iCal

タイトル:

日本海溝軸巨大地震性すべりの時空間分布解明に向けて

講演者

小平 秀一(海洋研究開発機構 地震津波海域観測研究開発センター長)

概要


はじめに

海溝軸近傍が大きく変動し、巨大な津波を生成する地震、いわゆる津波地震の存在は70年代後半より指摘されており、特に1896年明治三陸沖地震はその典型例として多くの研究で取り上げられてきた。更に最近では、2010年にインドネシアで発生したMentawai地震(Mw 7.8)は2007年の地震(Mw 8.4)の海溝側で発生し、海溝軸近傍での地震性すべりの可能性が示されていた。しかしながら、海溝軸での地震性すべりを示す直接的な証拠が示されておらず、津波地震の断層がどのようにどこまで達したかは明らかにされていなかった。その為、津波地震の存在が指摘されていたにも関わらず、これまでの沈み込み帯地震発生帯の概念モデルでは、海溝極近傍のプレート境界断層は定常的なすべり域・非地震性すべり域と考えられてきた。そのような背景で2011年東北沖地震が発生した。この地震に関しては、多くの研究によって海溝軸に至る50mを超える地震性の断層すべりが確認され、特に宮城沖での海底地形変動、海溝軸変形構造、海底地殻変動データから地震時の変動が海溝軸ぎりぎりまで及んだことが明確に示された。

海溝軸変形構造の意味

海溝軸周辺の地下構造イメージから、東北沖地震の地震断層は海溝軸に沈み込んだgraben構造上に堆積した遠洋性堆積物層を海側に押し剥がすようにして海溝軸まで至ったことが確認された。最も重要な知見は、この変形構造から見積もられる累積変位が1km程度に及んでいることである。今回の地震での断層変位が海溝軸周辺で50m程度とすると、この海溝軸堆積物の変形構造は今回の地震のみで作られたとは考えられない。言い換えると、海溝軸堆積物の変形構造は海溝軸まで至る地震性すべりが繰り返し発生してきた証拠と考えることができる。

海溝軸までの地震性すべりの時空間分布解明に向けて

上記の観測データは、海溝軸の変形構造を日本海溝全体に沿って明らかにすれば、海溝軸まで及ぶ地震性すべりが発生した領域を同定できる可能性を示している。しかしながら、これまでのところ海溝軸の詳細な地震学的イメージは宮城沖の一部の領域に限られていた。そこで、我々は海溝軸堆積物の変形構造を広域に明らかにする目的で、海溝軸を横断する高密度測線による高分解能反射法探査を開始し、2013年夏までに北緯40度までの調査を終了した。一方で地震学的構造イメージからは変形履歴そのものに迫ることはできない。そこで今後は、海溝軸堆積物サンプルから得られる地震由来の混濁流堆積物などの年代決定と組み合わせた研究が必要となる。さらに、地下構造イメージから同定された断層に沿って地震性のすべりがあった証拠を得るためには、断層掘削によって得られたサンプルから過去の摩擦発熱の証拠を得ることも必要となる。以上の理由から、海洋研究開発機構では今後数年間にわたり、千島海溝南部から日本海溝を経て伊豆・小笠原海溝にかけて、海溝軸での高分解能反射法探査、ピストンコアリングによる堆積物サンプリング、さらには海溝軸での深海掘削を提案・実施していく予定である。