[2015/6/19] 第2回理学部講演会

単分子磁石の機能向上を目指した分子設計(加藤恵一助教:東北大学大学院理学研究科)
  • 何が 2015年度理学部講演会
  • いつ 2015年06月19日07時00分から08時00分までのイベント (UTC / UTC0)
  • どこで 理学部11番教室
  • イベントをカレンダーに追加 iCal

題目:  単分子磁石の機能向上を目指した分子設計

講演者: 東北大学大学院理学研究科・JST CREST 助教 加藤恵一

 

2003年に石川らによって初の希土類単分子磁石(Single-Molecule Magnet)フタロシアニン(Pc)2層積層型Tb錯体 TBA[TbPc2]が報告された[1]。この分子の特徴は、縮重したTb(III)の基底多重項が上下からサンドイッチした2枚のフタロシアニンの強い配位子場により分裂し、基底状態と第一励起状態間のエネルギー差(=活性化障壁エネルギー)が400 cm-1に達し、約50 KでSMM特有の遅い磁化緩和現象(スピンの反転速度が数ミリ秒オーダーとなる)を示す。しかしながら、磁気ヒステリシスは2 K程度の低温でしか観測されない。

我々は先行研究として、分子配列の異なるTbPc2の構造と磁気特性を比較した。その結果、TbPc2が二次元的に弱く相互作用している系では磁気ヒステリシスは1.8 Kでも観測されなかった。ところが、斜め一次元に配列した系は1.8 K程度で磁気ヒステリシスが観測された。因みに、分子間相互作用の影響を取り除いたTbPc2孤立分子で

は、1.8 K程度で磁気ヒステリシスが観測される。これは、分子間磁気相互作用が磁気特性に影響を及ぼしていると考えられた。

そこで、我々は分子配列を考慮した分子設計を行い、TbPc2の片方のPcをNc(ナフタロシアニン)に変えたTbNcPcを合成した[2]。 単結晶構造解析の結果、Pc部位とNc部位が交互に積層した一次元カラム構造となっており、カラム間には拡張したベンゼン環同士のπ-π相互作用が存在する。磁気測定の結果、一次元に配列させた系(1)に

おいて20 K程度の高温でも磁気ヒステリシスを観測した。一方、分子間相互作用の影響を取り除いたTbNcPc孤立分子(2)は、1.8 K程度でのみ磁気ヒステリシスが観測された。1.8 Kでの磁化緩和時間(τ)を比べたところ、1は2に比べて約5桁遅くなっていることから、一次元鎖内でのTb間磁気相互作用が磁化緩和時間(τ)に影響を及ぼしていることが考えられる。このように、Tb-Pc系積層型SMMに分子間相互作用を上手く取り入れることで、低温での磁気特性が劇的に変わることがわかってきた。

 

[1] N. Ishikawa, et al. J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 8694.

[2] T. Komeda, H. Isshiki, J. Liu, K. Katoh, M. Shirakata, B. K. Breedlove, M. Yamashita, ACS Nano, 2013, 7, 1092.