[2016/8/19]第2回理学部講演会

細胞核内クロマチン動態の新奇現象(菅原武志:広島大学)
  • 何が 2016年度理学部講演会
  • いつ 2016年08月19日07時30分から08時50分までのイベント (UTC / UTC0)
  • どこで 15番講義室
  • 連絡先名称 5614
  • 連絡先電話番号 原裕貴
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題目:      細胞核内クロマチン動態の新奇現象

Stagnant, itinerant chromatin dynamics inside the fission yeast nucleus

 

講演者:  講師:菅原 武志 (広島大学クロマチン動態数理研究拠点)

 

要旨:

ヒトなどの高等生物では、間期染色体は互いに絡まらず区画化された「染色体テリトリー」構造をとり、一部の植物細胞や酵母では、セントロメアとテロメアが核表層の対極に固定された「ラブル構造」をとることが知られている。これらの染色体の大域的構造はクロマチンの動きを物理的に制約し、ゲノム上の各遺伝子を細胞核内の制限された領域に位置づける。他方、活性遺伝子はそのような大域的構造による物理的制約から逃れ、転写ファクトリーや核膜孔付近に局在することが示唆され、遺伝子座が細胞周期をつうじてどのように核内配置を維持・変化させるのかについては未解決のままである。我々は間期クロマチン動態を研究するため、分裂酵母S. pombeの複数の遺伝子座を可視化し、先行研究よりも長時間スケールでタイムラプス観察を行った。核表層上に局在するspindle pole body (SPB, 中心体に相当) から各遺伝子座までの物理的距離を核内配置の指標とした定量的解析から、遺伝子座は複数の過渡的局在配置間を移動し、複数の「遺伝子テリトリー」間を遷移することが示唆される。統計的推定手法(隠れマルコフモデル)を用いた解析を行い、そのような「動きが停滞した(stagnant)」複数の配置状態を「遍歴する(itinerant)」挙動を統計的に妥当化した。さらに、上記のstagnant/itinerantクロマチン動態の細胞周期依存性を調べるため、細胞成長に応じて変化する細胞形態とクロマチン動態の相関解析を行った。これらの解析結果から、観測されたクロマチン動態はこれまで報告されているような高分子単純拡散とは異なる、新奇なダイナミクスであると示唆される。本講演では上記の結果を紹介し、クロマチン動態が細胞周期進行の間果たす機能的役割について議論する。