[2019/11/1]第9回理学部講演会

強制振動仮説と潮汐バーストの概念(池田幸夫:山口大学)
  • 何が 2019年度理学部講演会 物理・情報科学科
  • いつ 2019年11月01日16時30分から17時30分までのイベント (Asia/Tokyo / UTC900)
  • どこで 理学部第11講義室
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講演者:池田幸夫(山口大学教育学部名誉教授)

題目:強制振動仮説と潮汐バーストの概念

内容:

 起潮力には,ベクトルとしての力と周期性という2つの力学的性質がある。ニュートン以来,潮汐の説明には前者が圧倒的に多く、周期性に着目したものはきわめて少ない。

 起潮力の周期性に着目すれば,潮汐の力学的原理は「強制振動」である。地球全体が水深5000mの海に一様に覆われた仮想地球に強制振動仮説を導入すると,逆位相の潮汐が発生するはずである。起潮力の振動数が1日当たり2であるのに対して、水深5000mの海洋の固有振動数はそれより小さいからである。逆位相の潮汐とは、起潮力最大の所が満潮ではなく干潮になる潮汐であり、一般に信じられている通説とは全く逆の潮汐である。

 強制振動の重要な性質は、外力の振動数が振動体の固有振動数に一致したときに起こる「共振」である。潮汐波の理論的考察から、海洋が共振を起こすためには,約22000mの水深が必要である。水深が22000mになると、潮汐波の速度が自転による起潮力の移動速度(毎秒460m)に等しくなるからである。共振によるこの巨大潮汐が「潮汐バースト」である。

 強制振動仮説から導かれる重要な概念の一つは、水深h=22000mを基準にした潮汐の分類である。すなわち、①h<22000m:逆位相の潮汐、②h=22000m:共振(潮汐バースト)、③h>22000m:同位相の潮汐である。ちなみに、地球潮汐は潮汐波の速度が速いので、③の同位相の潮汐となる。

 もう一つの概念は潮汐バーストである。地球科学や天文学において、潮汐バーストには極めて重要な意義がある。潮汐摩擦によって地球の自転は、100年当たり0.0024秒ずつ遅くなっている。この割合が継続するとすれば、約70億年後に起潮力の振動数が海洋の固有振動数に等しくなって、海洋は潮汐バーストを起こすであろう。

もう一つの潮汐バーストは固体地球のバーストである。太陽系誕生直後の原始地球は、極めて高速で自転していたことが分かっている。地球自由振動から固体地球の固有周期を約54分とすると、自転周期が108分(約2時間)のときに、起潮力の周期が54分となって固体地球の潮汐バーストが発生する。固体惑星がバーストを起こせば、惑星は崩壊する。地球が現在まで生き残っている事実は、誕生直後の自転周期が2時間よりは長かったからであろう。さらに推論を広げるならば、もし太陽系誕生直後に2時間以下で高速自転する原始惑星があったとすれば、この惑星は潮汐バーストによっていつかは崩壊した可能性が高い。

 以上のように、潮汐バーストは「惑星衝突」や「ロッシュの限界」と共に、惑星崩壊の新しいメカニズムとして理論的に検討する価値がある。