火星の火山活動研究

火星のオリンポス山におけるカルデラ陥没以降の火成作用について:辻智大の研究グループ

 山口大学理学部(大学院創成科学研究科)の辻智大助教のグループは、火星のオリンポス山における火山活動に関する研究に取り組んでいます。最近、オリンポス山では従来考えられていた時代よりも新しい時代に火成作用があったとする見解が示されました1)。これは火星の火成作用を考えるうえで重要な知見です。当グループは、オリンポス山の高解像度画像を用いて、壁面の詳細観察および画像解析を行い、火山活動史の地質学的・地形学的解釈を試みています。

概要

 火星のオリンポス山は標高約21 km、裾野が約600 kmに達する太陽系最大の火山です(図a)。その巨大な山体は主に溶岩の流出によって形成され、その活動の最後期に山頂にてカルデラ陥没が複数回発生したと考えられてきました。最近、このカルデラ陥没以降に新たに火成作用があったとする見解が示されました1)。それは、オリンポス山の山頂カルデラの南側に見られる奇妙な溶岩地形に基づくものです。オリンポス山では、山頂カルデラを中心として、そこから放射状に溶岩が斜面を流れ下った跡がいくつも認められます(図bの青色部)。ところが、山頂カルデラの南側では、溶岩が流下した下流側が上流側より高くなっている部分があります(図bの黒枠内)。これは溶岩が流れた後に、その下流側の地域が隆起したのだと解釈されました1)。この隆起は、新しい時期に地下からマグマが上昇したことを示唆するものとされています1)
 しかしながら、まだよくわかっていない点がいくつかあります。一般的に、マグマが浅部に上昇することによって山体が隆起する場合、その変動源を中心としてドーム状の隆起や放射状の亀裂が生じることが知られています。しかし、オリンポス山の山頂にはそのような地形は認められません(図b)。
 山頂カルデラの南側の隆起を示すもう一つの根拠として、カルデラの南半部が北向きに傾斜していることが挙げられています。しかし、これはカルデラの縁部から中心に向かって傾斜するという、カルデラ陥没によって起こる一般的な地形的特徴として説明可能です(図c)。カルデラ内には、円弧状の地溝が発達しています(図d)。これらはカルデラの中心付近に向かって発達しており、カルデラ陥没後にも地表が沈下したことで説明されます。

今後の展望

 上記のようにオリンポス山のカルデラ陥没以降の火成作用について、いくつかの問題が指摘されます。これらについて、今後、GISおよび高解像度画像を用いた地形学的解析を用いて、微地形の解読やカルデラの形成過程を検討したいと思います。

本研究の意義

 オリンポス山の活動は火星の中でも最後期と考えられており、その活動史は火星の火成作用の終焉を知るために重要です。また、人類の火星移住が計画されている中で、火星における火山の噴火可能性を検討することは人類にとって非常に重要な研究だと考えます。

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a)オリンポス山の空中写真
(Mars Trek使用)
b)山頂カルデラ周辺の溶岩の分布図
(Mouginis-Mark and Wilson, 2019を改変)
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c)カルデラ内部の等高線図
(MOLA DEM Data使用)
d)画像解析結果
(CTX image使用)

引用文献 1) Mouginis-Mark and Wilson (2019) Icarus, 319, 459-469.