秋吉台科学博物館 学芸員 石田麻里さん
インタービューアー(以下、イ):今回のインタビューは山口大学大学院理工学研究科で秋吉台科学博物館の学芸員としてご活躍されています石田 麻里さんです。石田さんよろしくお願いします。
石田 麻里さん(以下、石):よろしくお願いします。
コウモリ博士誕生
イ:ご専門であるコウモリの研究で今回山口大学から「コウモリ博士」が誕生したわけですが、まずは博士(理学)取得おめでとうございます。
石:そうですね。学位論文は秋吉台に生息する2種のコウモリがテーマでした。そのうち1種は洞窟以外もねぐらにするコウモリで、その生態について調査・研究を行いました。昼間、洞窟に入って洞窟での生息状況を調査したり、もちろん夜行性なので、夜間はどういう環境に適応しているか?森林に赤外線センサーカメラを設置して自動的に撮影をおこなう方法で夜間活動の調査をしました。あとは住民の方からの情報もいただきました。
イ:そのコウモリは何というコウモリですか?
イ:バンディング調査とはどういった方法ですか?
石:捕獲して、体重測定や性別等を調べて前腕に標識(バンド)を付けて放すんです。バンドには記号や番号が記載されているので、データと照合すれば、いつどこで捕獲したかが分かるんです。捕獲しては付けて放す。付いている固体は番号をチェックする。その繰り返しで9年ぐらい調査をして、それをまとめた物がこの中(論文)の一つです。 秋吉台の洞窟にすむ他のコウモリは洞窟性で、一年のほとんどを洞窟をすみかとしているので、季節的に移動したとしても秋吉台のどこかの洞窟にいることが多いんです。でも、テングコウモリは春、洞窟から出ていくと何処にいるか全く分からなくなるんです。秋吉台の洞窟から別の地域の洞窟へ移動するのか、秋吉台の中で別の洞窟へ移動するのか・・・もしかしたら洞窟ではない場所、森林などへ移動しているのかもしれない。そこはこれからの課題ですね。
イ:でも、なぜか春には集結するんですよね?
イ:発信機等は付いていないのですか?
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石:クマやシカの様に体が大きければ、発信機を着けて1年以上追跡することができますが、コウモリは体が小さいうえに飛ばなければならいので、小型でバッテリーの寿命が短い(2週間程度)ものしか取り付けられないんですよ。研究内容によっては、それを付けて10日から2週間、夜間の活動調査や行動域調査をすることもあります。ただ、今回はバンディング調査なので1頭ずつ捕まえては手で確認をするの繰り返しです。 |
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石:そうですね。ツナギを着て、長靴履いて、ヘルメットにヘッドライトを装着し、体重計、ノギス、竿、スプーン、網などを持って入ります。あと、コウモリを捕獲する際に落ちてコウモリを怪我させないように2人ぐらいでビニールシートを持って広げてますね。 |
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イ:万全の態勢ですね。
石:そういった道具を持って4人ぐらいで洞窟に入ります。私の調査では、1回の調査にだいたい3ヶ所の洞窟を回りますね。秋吉台には400個以上の洞窟があるんですよ。
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イ:洞窟探検で面白かった事や怖かった体験等がありますか? 石:落ちたり迷子になったり・・・・そういう事が無いように4人以上で入ってきちんとしたルールがあるので安全面は気を付けてやっています。だから怖い体験はないですね。 |
きっかけはサンショウウオの飼育
イ:石田さんはなぜコウモリの研究を始めたのですか?コウモリのイメージは怖いというのが一番にあるのですが。
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イ:音声と言えばコウモリは超音波を使いますよね?それは人間には全く聞こえないものなんですか?
イ:コウモリってキィーキィーキィーってイメージだったんですが、あれは鳴き声なんですか? |
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コウモリはスパルタ教育!?
イ:親子の音声コミュニケーションについて、母親が子に羽ばたき方を教えるって記事を読んだことがあるのですが、どういったふうに教えるのでしょうか。
石:はい。アブラコウモリはとても身近なコウモリなんです。
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石:はい。民家です!別名「イエコウモリ」と言われるぐらい、むしろほとんど人家にしかすまないようなコウモリです。山林や洞窟にはほとんどいないですね。小さいコウモリで、翼をたたんだらこれくらいです。体重は5~6gですよ。だから、人間の親指が入るぐらいの隙間があったらどこでも入れるんです。例えば換気口だとか。そこから入って屋根裏にすんだり、屋根瓦の下だとか、結構過酷な場所にも入り込むことができるんです。もし、家の壁に長さ1㎝もないぐらいの細長い黒い糞が付いていたら、それはコウモリの糞です。その上の隙間からコウモリが出入りしている可能性がありますね。
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コウモリ全盛期は氷河期!?
石:調査をしていると洞窟内の岩の下からコウモリの化石が出たりするんですよ。
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石:(笑)そうかもしれないですね。温かい場所の方が生息しやすいというイメージがありますが、秋吉台で化石として出ているけど今は秋吉台には生息していない種の中には、現在の日本では北日本や東日本もしくは西日本でも標高の高い山地のような、寒冷な気候の場所にしか生息していないコウモリもいます。だから、温かいから良いってわけでもないんです。虫を餌にしているコウモリがほとんどなので、寒い所だと虫餌の数も少ないのに何ででしょうね(笑)。そのへんは不思議ですね~。
イ:化石を見てみたいのですが博物館に展示はされていますか? |
学芸員のお仕事とは?
石:まずは教育普及ですね。これが一番イメージが強いと思います。 |
名刺にもコウモリが!
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あとは、近くの博物館と共催でコウモリ観察会というのをやっています。
イ:動物限定ではないって事ですね。 |
学芸員を目指す方へ
イ:では、最後に学芸員を目指している方へ何かアドバイスがあればお願いします。
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おまけ(インタビュー後にいろいろな種類のコウモリ写真を見せてもらいました)
★チスイコウモリ
鋭い牙で首筋に噛みつき |
石:これはチスイコウモリです
イ:吸血コウモリですね。 |
★テングコウモリ
石:これがテングコウモリの赤ちゃんです。
石:産まれた時は1.2gです。1円玉1個チョットぐらいの大きさなんですよ。テングコウモウリもイエコウモリと同じで、1頭だけではなくて2頭産むこともあるんですよ。多い時は3頭産むことがあるんです。
イ:途中、気になっていたのですが・・・コウモリって1頭・2頭って数えるんですか?
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テングコウモリの赤ちゃん。 |
石:あははは。よく聞かれるんですよ~(笑)。私も一時期どう呼ぶか悩んだんですけど・・・。
イ:えぇーー!そういう基準なんですかぁ(笑)。
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インタビュー:2012年3月14日(金)13:00-15:00