秋吉台で新たに発見された桐ヶ台の穴の学術調査

「秋吉台で新たに発見された桐ヶ台の穴の学術調査」

研究の背景・目的:

山口県のほぼ中央部に位置する秋吉台は石灰岩からなるわが国最大のカルスト台地であり,地下には450を越える石灰洞が分布している。これらの洞穴群は約400万年前から現在に至る長い期間の間に形成されたものである。平成15年に発見された「桐ヶ台の穴」は洞口標高が385mであり,秋吉台形成の創生期に形成されたと考えられ,過去数100万年間の地形・地質・生物の環境変遷が記録されている可能性がある(図-1)。山口大学理学部では,秋吉台科学博物館とともに各分野の研究者からなる学術調査団を結成し,4回の現地調査を行い,洞穴の調査、堆積物の解析などを行い,過去数100万年の洞窟発達史の解明を行った。

主な成果:

4回の調査により洞穴の精密な測量図を作成するとともに(図-2),洞窟内の石灰岩の解析,洞内堆積物の発掘・解析を行い,火山灰,花粉,絶滅種を含む多くの獣骨化石を発掘・記載するとともに,洞穴発達史に関して考察を行った。主な成果は以下の通り。

  1. 洞穴は標高385m付近の小ドリーネの斜面部に開口し、4段のテラスを有し、最深部は-93.5mである。地下水流は認められず、洞床部は落石や二次堆積物で覆われている。
  2. 第2、第3テラスを中心に多数の獣骨遺骸・化石が発見された。小型哺乳類としては、絶滅種であるシカマトガリネズミ、寒冷種で現在当地には生息しないシントウトガリネズミなどが発掘された(図-3)。大型哺乳類としては絶滅種であるナウマン象の左下顎乳臼歯(図-4)や現在は生息しないニホンオオカミ (図-5)、さらに多数のシカ、ウサギ、アナグマ、タヌキなどが発見された。
  3. 産出化石の年代、火山灰、堆積物の性状、洞穴の溶食形態、周辺地形などから、以下の生成発達史を考察した。①桐ヶ台の穴が地表面標高が約500mであった前期鮮新世(約400万年前)に形成が始まり,②ドリーネの発達とナウマンゾウ,シカマトガリネズミを含む化石層の裂罅中の移動(中期更新世末~後期更新世前期頃:約30万年~10万年前),③黒色灰岩層の侵食の時代を経て,④一次包含層の洞内への堆積(更新世後期~完新世:2万年前~)が起こった。その際,シントウトガリネズミ,Aso-4、 K-Tz火山灰の混入が考えられる。さらに,⑤現在の洞口が開口し現生生物が落下し獣骨が堆積した。
  4. 洞窟内で採取した石灰岩の解析により秋吉石灰岩の堆積環境変化の解明と、地層の逆転構造の実証がなされた。


今後の展開:

今回得られた堆積物などの情報はこれまで空白とされた秋吉台形成の創生期(数100万年前)における古環境や地形発達史に新たな知見を与えるもの考えられる。今後はさらに総合的に秋吉台の洞穴群の調査を行い,隔離された環境に記録された過去数100万年間の古環境変遷に関する研究を進め自然と人類が共生するための知恵を探索する予定である。

研究者名、連絡先(アドレス):
理工学研究科 自然科学基盤系学域 田中 和広 (ka-tanak@yamagutchi-u.ac.jp)

学術論文など:
桐ヶ台の穴学術調査団(2006)秋吉台桐ヶ台の穴石灰洞学術調査報告書,99p


図-1 桐ヶ台の穴位置図
山口ケービングクラブ(2002)に加筆
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図-2 桐ヶ台の穴縦断面図
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図-3 発掘された小型哺乳類化石
1~3  シントウトガリネズミ
4~8  シカマトガリネズミ
9    ヒミズ
10,11  スミスネズミに近似種
12~15 ヒネネズミ
16   アかネズミ
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図-4 ナウマンゾウ(Palaeolozodon naumanni)の
左下顎第3乳臼歯化石
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図-5 ニホンオオカミ(Canis hodophilax)の遺骸
アメリカ産の現生種に貼り付けた画像
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