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[2018/7/25] 平成30年7月豪雨による県内の災害箇所の緊急調査結果

本年6月末から降り始めた停滞する梅雨前線による降雨が7月に入っても継続し、5日からは局所的な線状降水帯の形成が同時に複数個所で発生することで、九州から中部地方の11府県で大雨に関する特別警報が発表されるに至りました。この豪雨により6日深夜から各地で洪水、氾濫、土砂災害等が多数発生し、200名を超える犠牲者と多大な経済的損失を被りました。

地球圏システム科学科では、7月上旬の豪雨により発生した土砂災害等について、7月14日に工学部と共同で緊急の調査を行いました。代表的な調査結果について、ここに報告いたします。

今回の災害で亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。また、今回の調査に際して、現地での立ち入りをお許しいただいた地元の皆様、復旧作業にあたられていた業者の皆様に感謝申し上げます。

 

今回は図1に示す範囲で発生した災害地について調査を行いました。ここでは図1に示したポイント02、05、06、07での調査結果について報告します。

調査ポイントのうち02は光市に位置し、05、06、07は岩国市周東町に位置します。周辺地域の地質は、領家帯の変成岩および花崗岩、広島型花崗岩、玖珂層群の堆積岩とそれに含まれるチャートブロックからなります(図2)。

図1 調査範囲の地形と報告する調査ポイントの位置(国土地理院公開の地形データをカシミール3Dで表示)

図2 調査地域周辺の地質図(産総研の日本シームレス地質図をGoogle Earth上に表示)

151:領家変成岩、130:前-後期白亜紀の珪長質深成岩類(領家帯花崗岩)、129:後期白亜紀の珪長質深成岩類(広島型花崗岩)、52:中-後期ジュラ紀の付加コンプレックスの基質(玖珂層群の堆積岩)、53:中-後期ジュラ紀の付加コンプレックスのチャートブロック(玖珂層群中のチャートブロック)

 

ポイント02では、島田川の溢水と護岸崩壊(図3)が発生していました。島田川が蛇行原から三角州に至る直前の蛇行流路にあたります(図4)。島田川の顕著な蛇行原の延長は短く、島田駅付近から7㎞程度の延長です。上流側は蛇行振幅が小さく、当該箇所から蛇行振幅が大きくなっています。今回の護岸崩壊は蛇行振幅が大きくなった攻撃部で発生しています。

図3 島田川で見られた護岸崩壊

 

図4 島田川の護岸崩壊の発生位置と周辺地形(国土地理院公開の地形データをカシミール3Dで表示) 
赤楕円:図3の撮影範囲、赤矢印:撮影位置と方向

 

ポイント05は、物見ヶ岳、樽山の山地地形を下刻する東川と田代川の合流点から約1㎞東川上流の穿入蛇行谷の攻撃斜面にあたります(図5左)。当該箇所は東川と田代川の側方浸食により蛇行頸状部様の地形を呈しており(図5右)、斜面頂部からの崩壊と攻撃斜面に位置する護岸の浸食が発生しています(図6)。当該斜面の対岸の斜面に鞍部形状がみられ(図7)、地形図上は当該地と鞍部を通過するリニアメントが認められ、地質断層などの弱面部の分布が推定されます。

斜面崩壊は弱面部への降雨浸透あるいは降雨による浸食が原因と考えられます。一方、護岸浸食は穿入蛇行する河川の側方浸食ということになりますが、弱面部の分布が攻撃斜面形成の要因である可能性があります。

図5 ポイント05周辺の地形(国土地理院公開の地形データをカシミール3Dで表示)

図6 ポイント05で見られた護岸崩壊(左)と斜面崩壊(右)

図7 ポイント05当該斜面の対岸の斜面にみられる鞍部形状

図8 ポイント06周辺の地形(国土地理院公開の地形データをカシミール3Dで表示)

 

ポイント06は、物見ヶ岳の山地地形を穿入蛇行して下刻する東川上流部の岩国市周東町獺越地区にあたります(図8)。当該地周辺では東川沿いに2面の段丘面がみられます。空中写真の判読結果から、今回土石流が生じた渓流出口には高位の段丘面上に沖積錐がもともと形成されていたことがわかります(図8、図9)。

河床に分布する土石流堆積物中には、花崗岩の岩塊とチャートの岩塊が確認されます(図10)。図2の地質を考慮すると、花崗岩岩塊は広島型花崗岩、チャートは玖珂層群のチャートブロックと推定されます。

図9 渓流の出口と土石流堆積地の全景写真(左)とクローズアップ(右)

図10 土石流堆積物中の花崗岩岩塊とチャート岩塊

図11 ポイント07周辺の地形(国土地理院公開の地形データをカシミール3Dで表示)

ポイント07はポイント06の東方の、岩国市周東町北畑にあたる。2本の渓流が北畑集落で合流して1つの沖積錐を形成しており、そこを水田として整備しています(図11)。今回は両方の渓流で崩壊と土石流が発生しましたが、左岸側(東側)の渓流のほうが集落周辺まで流下した土石流堆積物(図12)の体積が大きいようです。右岸側渓流には砂防えん堤が設置されているため、これにより集落まで達した土石流の規模が小さくなったことが考えられます。

当該箇所周辺は、カリ長石の斑晶を含む中〜粗粒で塊状の黒雲母花崗岩からなり、マサ土化した部分がみられません。現在は河床に花崗岩塊が堆積しています。崩落源頭部付近の花崗岩(図13)は、幅1–2 mの間隔で3方向に節理が発達しているため、節理に沿って風化が進行して岩塊化が進むと、崩落する可能性があります。

図12 左岸側渓流出口の土石流堆積物(左)と水田上に堆積した土石流堆積物(右)

図13 左岸側崩壊源頭部とそこに分布する花崗岩

 

ポイント06、07の崩壊発生源を遠望すると、崩壊発生源の位置はほぼ同程度の標高(約400m)です(図14、15)。標高400m付近を境界にして、沢地形の発達程度が異なり、それ以高ではそれ以低に比べてあまり沢地形が発達していないように見えます(図14)。また、崩壊発生源の上部には、尾根地形の分断とそれに続くような椀状沢地形の発達など、重力変形による山体変動の地形と思われる特徴も認められます(図14、15)。

以上のことから、この両ポイントにおける斜面崩壊と土石流は、重力変形による破壊が進行した山塊前面の斜面下部で降雨時に繰り返し発生する事象と推定されます。

図14 ポイント06、07周辺の地形の特徴

図15 ポイント06、07周辺の遠望写真

 

以上

 

(文責:太田岳洋、大和田正明)

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